4.5坪の小さな厨房から世界へ。
1日最多3,300個超のおにぎりを「握りたて」で届けたEXPO 2025の裏側。
国際的なビッグイベントであるEXPO 2025。来場者の長い行列を前に、通常なら完成しているおむすびを陳列し、販売することが合理的な選択です。しかし、「お客様に炊き立てのご飯で、握りたての美味しさを提供したい」という強い想いを実現するために「Cook to Order方式(都度調理)」に挑戦しました。本コラムでは、万博という世界的なビッグイベントで直面した課題と、得られた知見についてお話しします。
「おいしいおむすびを世界へ届けたい」という象印マホービン様(以下敬称略)との思いが共鳴し、炊き立て熱々ご飯を注文を受けてから握り提供するおむすびロボットを共同開発しました。開発した「ふんわりおむすびロボット‐結び‐(以下‐結び‐)」は象印マホービンの専門店「ONIGIRI WOW!」にて活躍し、累計32万個以上のおむすびを提供しました。詳細はこちら
象印マホービン最上位炊飯器「炎舞炊き」(左)/ふんわりおむすびロボット‐結び‐(右)
動画:ONIGIRI WOW!で活躍したふんわりおむすびロボットの動き
お客様が次々と来店され、炊きたてのご飯を大量に使用する中で、現場では想定外の「湯気」が私たちを苦しめました。検証段階では再現できなかったほどの湯気がセンサーを誤作動させ、オペレーションに影響を及ぼしたのです。現場の使い勝手に一時的にご不便をおかけしましたが、社内で直ちに検証・対策を検討し、迅速なアップデートによってこの難題を克服することができました。
「いつでもアツアツのおむすびが食べられることに驚き、感動した」という声や、SNSでの大きな反響を見て、私たちは改めて製品の価値を確信しました。
「握りたて」の提供は、「熱々のご飯がほどける食べ応え」や「立ち上がる湯気と香るお米や海苔の匂い 」など、おむすびの魅力を最大限に届けることができる提供方法の一つと考えています。注文システムと製造システムが連動した今回の仕組みは、まさにこの「握りたての感動」を世界に届けるための必須技術であり、今後の店舗運営における大きな可能性を広げるものとなりました。
通常、多品種を扱う少量生産は人的ミスが発生しやすいものです。しかし、オーダー端末との連携により伝達ミスを極限まで減らした結果、想定していた1日2,000個をはるかに上回る3,300個以上を提供する日もありましたが、お客様をお待たせすることなくスムーズな商品提供ができました。この効率こそが、EXPO2025での最大の成果の一つです。
ピーク時には1日あたり3,300個以上の提供。EXPO2025の開幕期間を通して累計32万個以上、14万6千組の来場者の方々におむすびのおいしさを届けることができました。
実際に店舗で働いていた象印マホービンのスタッフからは、以下のような声が寄せられました。
お客様側から見たONIGIRI WOW!
おむすびを作っている様子を見ながら待つことができます
「温かい!」と笑顔になるお渡しの瞬間です
わずか4.5坪(15㎡)という決して十分ではない狭小スペースで、想定より多くのおむすびを「toオーダー制(都度調理)」で提供できたことはユーザー様に新しい価値を提案できる成功例の一つになりました。この限られた空間で、熱々のご飯を崩さずに成型・搬送する独自の仕組みを実現し、高品質な「握りたて」のおむすびを大量に提供し続けました。
一方で、今後の飲食業界では、さらなる省スペース化の要望が高まることが予想されます。私たちはEXPO2025で得たこの貴重な知見と成功体験を活かし、さらなる技術革新を進めます。今後は、より高品質でありながら、あらゆる店舗に導入できる実用性の高い製品開発へとつなげ、ユーザー様の期待に応えてまいります。
この度のEXPO 2025 への挑戦は、私たち一社だけでは成し得ませんでした。
まず、「おいしいおむすびを世界へ」という熱い志を共有し、機会をくださった象印マホービン様に、心より感謝申し上げます。最上位モデル炊飯ジャー「炎舞炊き」をはじめとする卓越した技術と、現場スタッフ様のご協力なくして、この成功はあり得ませんでした。
そして何より、「ONIGIRI WOW!」にご来場いただき、熱々のおむすびを召し上がったすべてのお客様に、深く御礼申し上げます。私たちはBtoBtoC企業を謳っておりますが、お客様からの声を聞く機会が中々ないため、皆様からいただいた「感動した」「美味しかった」という温かいお言葉はとても励みになりました。
万博で得た「握りたての感動」と「システムによる効率化」という確かな知見を武器に、私たちはこれからも食の未来をデザインし、より良い製品とサービスを追求し続けます。
本当にありがとうございました。